本題に入る前に今日は一枚のカセットテープを紹介したいと思います。
作曲ソフトのバグをも使いながら生まれたグリッチ的なフレーズを人力で再現するアンプ直のギターの美しいヴォイシングと、そこに本来存在しなかったグルーブやリズムを発見的に重ねていく繊細かつ剛腕なドラムによるデュオ、te_ri(https://cadisc.bandcamp.com/music)の最新アルバムです。
その作曲手法の特異性からとても難解な音楽のように思われてしまうかもしれませんが、緻密な複雑さは美しい響きを纏って時に引っ掛かりを残しつつ流れていき、まるで渓流下りのようなスリリングさ。ライブでの軽妙なMCも相まって、「軽やかな脱臼の連続」とも称される彼らの世界観に一気に引き込まれてしまいます。
te_riのギタリスト村上巨樹さんはミャンマー音楽研究でもその名を知られ、毎年ミャンマーでの現地調査を行っては日本全国に留まらず海外でもその魅力を伝えるべくトークイベントを精力的に続けていらっしゃいます。ミャンマー音楽がどういうものかは、村上さんのトークでも紹介されていたミョウマ楽団の演奏を聴いていただくのが一番かと思いますが、何度聴いても本当に衝撃的です・・・(Youtubeより転載です)
私たちの日常に触れて当たり前だと思ってしまっている音楽の構成から逸脱した、でも確実に独自の美学を持った音楽に圧倒されるとともに、まだ見ぬ美しいものが世界にはあふれているのだという確信のようなものを感じ、とても刺激を受けています。
とここまで唐突に自分の好きなものについて語りだしてしまいましたが、それと言うのも村上さんが岩手県花巻市で古書/レコード/東南アジア食品/ギター教室/イベントスペースが複合したスペース「港」を開くことになり、私が村上さんたちのファンであるご縁から内装設計を担当させていただいているのでした。
丁寧に仕上げていただき、大分姿が見えてきています。
駅前の商店街に面しガラス窓からの光も明るい白色基調の表の店舗スペースと、吸音を意識し木毛セメント板でラフに仕上げた奥の企む場、対照的な二つのスペースです。
村上さんのパーソナリティもあって、売り買いされる物だけではなくトークイベントなどこの場所でこれから積み重ねられていく物事は絶対面白いものになるぞ!というとても素敵なプロジェクトになっているので、オープンの暁には皆様是非お立ち寄りいただければと思います。
私個人としても、10月のオープンが今からとても楽しみです!