先月末は日常の業務の傍ら、慣れない小論文を書いていました。というのも、今年が4年に一度のコンクリート診断士の更新の年だったのですが、コロナウイルス感染症の影響で更新講習が行われず、その代わりに自己学習形式での研修となったからです。
コンクリート診断士というのは、社会ストックである、橋梁などの土木構造物から建築物までを含む既存コンクリート構造物の劣化診断・維持管理に関する知識、技術、倫理観を持った者として認定された技術者に与えられる民間資格です。
元々コンクリート診断士の更新講習は、最新の情報を提供する講演を聴講するだけではなく、ケーススタディとして劣化状況の写真やその構造物の置かれた環境など、限られた情報をもとに、その劣化の原因や対策方法を考察し、それを会場でディスカッションするという形で行われていました。これは能動的に学ぶ姿勢を否応なしに求められる、他にはなかなかないエキサイティングなものなのですが、それに代わるものとして、ケーススタディに加えて診断業務の実務経験についてのレポートが求められたのです。
私は、津波の被害を受けたコンクリート造建築物の調査診断及び復旧設計の事例を報告しました。当時は津波被害を受けた構造物の診断、復旧に対するノウハウもなく、手探りで調査、復旧設計を進めましたが、この経験から、建築設計者においても躯体の維持保全や災害からの復旧についての知識を持つことの必要性を痛感し、この資格を取得する大きな契機になったプロジェクトです。久しぶりに当時の事を思い出しつつ、拙いながらもなんとかレポートをまとめることができ、大変ではありましたが、改めて学び直す良い機会にもなりました。