2013~|社会活動|Ishinomaki,Miyagi,Japan
(公社)日本建築家協会東北支部宮城地域会「北上地域まちづくり委員会支援活動」の一員として、東日本大震災により甚大な被害を受けた石巻市北上町において、高台への集団移転に伴う宅地造成、復興公営住宅、集会所、公共施設などの復興事業における計画支援や合意形成支援、さらには住民の皆さんの意思決定を復興事業と接続するためのプラットフォームづくりに取り組みました。(第一回JIA東北建築大賞2020において「石巻市北上町にっこり団地におけるまちづくり支援活動」として大賞受賞)
地域の「自治力」と復興事業・制度の間をつなぐ仕組みづくり
石巻市北上町は「契約構」による地域自治の仕組みが日常生活にも色濃く残っている地域です。復興事業に地域の皆さんの意思を反映する、地域の皆さんの実情や考えていることと事業・制度の運用の間をつなげる仕組みをつくることで、地域の持つ自治力を活かした復興を実現したいと考えました。
にっこり北住宅団地
画一的な南向きの住宅地ではなく元々の地形を生かしたまちにしたいという想いを造成計画に反映することから始まり、別々の場所から集まった事情も利用する制度も異なる人たちがどのように一つのまちで共に住まうか、最終的には誰がどの区画に住まうか、という事まで、ワークショップを繰り返し地域住民の総意として決断していきました。結果として、地域のシンボルである北上川河口へ向けて開けた地形を生かした扇型に広がる配置と北上川に向かって視線が抜ける放射状の通り抜け、中心の集会所を挟んで自力再建住宅と公営住宅が卍字のように混ざり合い事情の異なる住民がお互いに見守り配置と合える関係という、この場所ならではの住宅地が実現しました。
にっこり自治会集会所
中心に位置する集会所も、新しい集落の拠点としてどのような使われ方や人の集まり方が想定できるか、地域の皆さんと一緒に考えました。地域のお祭りなどで大人数が集まったときには広場と室内を一体的に使いたい。日常的に人が集まれる半外部空間があるといい。集まりの際にはみんなで料理をし、みんなで食べるので、外部空間と大広間の中心には大きなキッチンが欠かせない。そうした話し合いから、広場、大広間、外土間の中心に台所がある構成と、広場を囲むように敷地の形状に合わせた鈍角のL字の配置が導き出されました。
竣工後地区のイベントに誘われて現地を訪れると、窓を開け放して縁側のように腰をかけていたり、外土間に椅子を並べてお話をしていたりと、広場を含めたこの場所全体を自分たちのものとして使いこなしている姿が印象的でした。
報告書
私たちの活動でできたこと、できなかったことなどを将来的に検証できるようにするため、議事録としてまとめてしまうと無味乾燥な記録になってしまう議論の様子や検討の経緯を、現場の生の雰囲気をできるだけ閉じ込めるように発言者の名前や言葉遣いを極力残したうえで報告書としてまとめました。