路地(法42条3項道路)の奥に建つ平屋の住宅の設計事例。内観。隣家の庭とその先に広がる空に向かってメガホン状に広がるリビング・ダイニング空間。隣家の屋根と庭越しに視線が抜ける。

路地奥に住まう|住在後巷|Living in the back of the alley

2015|House|Sendai,Miyagi,Japan

通りの喧騒から一歩離れた、幅2.7m、延長20数mの路地の奥に建つ、スキップフロアを取り入れた平屋の住まいです。ライフステージの変化に応じて「住みこなしていく」ための手がかりとなる「余白」を大切にし、暮らしながら少しずつカスタマイズしていける、おおらかな住まいを目指しました。
敷地は河岸段丘の崖上に位置し、周囲を隣家に囲まれていながらも、一段下がった隣家の屋根や庭越しに遠景まで視界が抜けており、袋地にありがちな薄暗さや圧迫感ではなく、街に晒されていないという安心感と開放感が共存しています。この状況を手がかりに、切妻屋根という一見普通の住宅形式をわずかにずらしながら、四方それぞれ異なる周囲との関係性を丁寧に調整しました。
軒の高さを抑えた大屋根は、周囲への圧迫感を軽減しつつ、内部ではリビング・ダイニング・キッチンがメガホン状に広がる構成となっています。この大きな屋根を支えるため、2本一組の柱・横梁・アングルブレースで三角形のフレームを形成し、それが並木のように空間内に立ち上がることで、「変形された切妻屋根」の形態が生まれました。
寝室と水廻り以外の生活空間は、段差や柱・梁でゆるやかに区切られたワンルーム形式となっており、柱や梁をあらわしにすることで、間仕切りや家具の取り付けが自由にできるようになっています。空間を仕切ったり開放したりしながら、子どもの成長や暮らしの変化に応じて、家族それぞれの居場所を柔軟につくり出せる住まいとなっています。


這棟單層跳層住宅建於 2.7 公尺寬、20 多公尺長的小巷盡頭,距離喧囂的街道只有一步之遥。我們的目標是創造一個寬敞的住宅,可以隨著居住的過程一點一滴地進行定制,重視「空白空間」,因為它可以隨著生活階段的變化提供「生活化」的線索。
該地塊位於河邊台地的懸崖上,雖然四周都是鄰居的房子,但透過鄰居房子的屋頂和花園,可以清楚地看到遠方,而鄰居的房子比這棟房子低一層,因此,由於這棟房子沒有暴露在城市中,因此沒有通常與死胡同有關的昏暗和壓迫感,而是安全感和開放感並存。以這一情況為線索,看似普通的屋頂形式被稍微改變,同時仔細調整與周圍環境的關係,四面的環境各不相同。
大屋頂加上低矮的屋簷高度,減少了對周遭環境的壓迫感,而屋內客廳、飯廳和廚房的配置則像傳聲筒一樣散開。為了支撐這個大屋頂,我們用兩組柱、橫樑和角撐構成了一個三角形框架,像一排樹木一樣聳立在空間中,形成了「變形屋頂」的形式。
臥室與水區以外的起居空間,則以台階、圓柱與橫樑松散地分割成一室一廳的形式,藉由圓柱與橫樑的外露,可自由裝配隔間與家具。房子可以分隔,也可以打通,讓每個家庭成員都能隨著孩子的成長和生活的變化,靈活地創造出屬於自己的生活空間。


Away from the bustle of the street, at the end of a 2.7m wide, 20+m long alley, is a one-story residence with a skip floor. We aimed to create a generous residence that can be customized little by little as one lives in it, valuing the “blank spaces” that provide clues for “living it up” as one’s life stage changes.
The site is located on a river terrace, and although it is surrounded by neighboring houses, there is a clear view into the distance through the roof and garden of the neighbor’s house, which is one step down. Taking this situation as a cue, we carefully adjusted the relationship with the surroundings, which are different on each of the four sides, while slightly shifting the seemingly normal residential form of a gable roof.
The large roof, with its low eaves height, reduces the sense of oppression to the surroundings, while inside, the living room, dining room, and kitchen are configured to spread out like a megaphone. To support this large roof, a triangular frame is formed with two sets of columns, transverse beams, and angle braces, which rise up into the space like a row of trees, creating a “deformed gable roof” form.
The living spaces, except for the bedroom and water area, are loosely divided by steps, pillars, and beams in a one-room format, and by exposing the pillars and beams, partitions and furniture can be freely installed. By dividing and opening up the space, the house can flexibly create a place for each family member according to the growth of the children and changes in their lives.

※共同設計:小谷竜士+小地沢将之

路地(法42条3項道路)の奥に建つ平屋の住宅の設計事例。ダイアグラム1:敷地の状況
diagram1 敷地の状況:「路地奥の宅地」/The situation of the site for the building.:“The site in the back of the alley”
路地(法42条3項道路)の奥に建つ平屋の住宅の設計事例。ダイアグラム2:変形された切妻
diagram2 周辺環境への応答:「変形された切妻」/The building is correspond with surroundings.
路地(法42条3項道路)の奥に建つ平屋の住宅の設計事例。ダイアグラム3:統合
diagram3 統合/The integration.
路地(法42条3項道路)の奥に建つ平屋の住宅の設計事例。アプローチ外観 バス通りから幅2.7mの細い路地を進むと徐々に姿を現す路地奥の平屋の住宅。
路地(法42条3項道路)の奥に建つ平屋の住宅の設計事例。路地の奥に徐々に姿を現す。
アプローチ外観:バス通りから幅2.7mの細い路地を進むと路地奥に徐々に平屋の住宅が姿を現します。
路地(法42条3項道路)の奥に建つ平屋の住宅の設計事例。アプローチ側外観。圧迫感を生まないように、玄関部分の軒高を低く設定。見る方向によって片流れ屋根に見えたり切妻屋根に見えたり、印象が変わります。 玄関ドアは木製。ポーチ土間は土たたき風左官材料。
アプローチ側外観:圧迫感を生まないように、玄関部分の軒高を低く設定しました。見る方向によって片流れ屋根に見えたり切妻屋根に見えたり、印象が変わります。 玄関ドアは木製。ポーチ土間は土たたき風左官材料。
路地(法42条3項道路)の奥に建つ平屋の住宅の設計事例。庭側外観。サッシの左右に突き出したボリュームは防火壁の役割を持つとともに、近隣からの視線をコントロールもしています。
庭側外観:大きく開いた開口の左右に、家族の暮らしを守る厚みを持った壁のように突き出したボリュームは、近隣からの視線をコントロールするとともに防火壁の役割も果たしています。開口の上部に大きく取った軒の出は、切妻の屋根の内側を周囲から覗きこまれないためのバリアとしても働いています。
路地(法42条3項道路)の奥に建つ平屋の住宅の設計事例。内観。隣家の庭とその先に広がる空に向かってメガホン状に広がるリビング・ダイニング空間。
内観:隣家の庭とその先に広がる空に向かってメガホン状に広がるリビング・ダイニング空間。
路地(法42条3項道路)の奥に建つ平屋の住宅の設計事例。リビング内観。隣家の屋根と庭越しに視線が抜ける。
リビング内観:隣家の屋根と庭越しに視線が抜けていきます。
路地(法42条3項道路)の奥に建つ平屋の住宅の設計事例。リビングからダイニングを振り返る。一段高くなった多目的室は将来的には子ども部屋や書斎として仕切っての利用も想定。段差は腰を掛けるのにちょうどよい高さ。
リビングからダイニングを振り返る:一段高くなった多目的室は将来的には子ども部屋や書斎として仕切っての利用も想定。段差は腰を掛けるのにちょうどよい高さになっています。
路地(法42条3項道路)の奥に建つ平屋の住宅の設計事例。多目的室内観。ライティングレールによる可変性を持たせた照明計画。壁は塗装用壁紙素地。
多目的室内観:特製のライティングレールによる可変性を持たせた照明計画。壁は塗装用壁紙を素地使いとしています。
sketch1:最初の頃に描いた検討のためのスケッチです。アプローチに向かって圧迫感を抑えたいが、南東方向に向かっては広がりを確保したい、という方向性が見え始めています。
sketch2:検討を進めるうちに、西側約1/3の部分に寝室や水廻りなどプライベートな空間をまとめ、残りをひとつながりのオープンな空間としつつ、色々な居場所を生み出したい、という方向性が固まってきました。
model1:手書きのスケッチを一旦図面化、模型を作り、周辺との関係や、スケッチで考えていたことが実現できそうか、確認を繰り返します。
model2:ある程度空間構成が固まったところで、構造家と打合せするために作った軸組み模型です。まだこの時点では整理しきれず複雑な架構になってしまっています。構造家との打合せで出た「木造倉庫の様なおおらかな架構」という方向性を活かしながら、平面と構造を整理する作業を進める事になりました。

model3

(C)photo:Akira SAITO

Houzzに登録中の仙台市泉区, 宮城県, JPの齊藤彰