設計のプロセス|「路地奥に住まう」の場合

私たちがどのような検討を経て設計を進めているか、参考までに「路地奥に住まう」の設計、検討プロセスを少しですがご紹介します。完成した様子はこちらのプロジェクトページよりご覧いただけます。

現地調査

敷地南側は境界に迫った二階建の戸建住宅、西と北は外廊下が敷地側を向いた二階建のアパートに囲まれており、そして敷地の東側には、接道を満たしていない南側隣地への専用通路を確保する必要がありました。
この専用通路と隣家の庭越しに段丘崖へ向かう南東方向への視覚的な開放感が感じられたことと、比較的広い宅地であったこともあり、「路地奥特有の圧迫感」はここでは「街から適度な距離が保たれた安心感」に変換できると確信できました。
これらの「敷地の状況」を手がかりに設計にとりかかりました。

状況分析
diagram1 敷地の状況:「路地奥の宅地」/The situation of the site for the building.:“The site in the back of the alley”

路地の奥、周囲をアパートや隣家に囲まれていながら、南東方向にわずかに広がりを持つ敷地です。
南側は境界まで迫った住宅から距離を取りつつ南東側の隣家の庭と視覚的につながるような庭を確保したい。路地からのアプローチに対しては訪れる人や車を受け止める「引き」確保したい。そう考えていくと、敷地に対して角度を振って建物を配置することで、適切な外部空間が確保できることに気が付きました。

sketch1

最初の頃に描いた検討のためのスケッチです。アプローチに向かって圧迫感を抑えたいが、南東方向に向かっては広がりを確保したい、という方向性が見え始めています。
sketch2

検討を進めるうちに、西側約1/3の部分に寝室や水廻りなどプライベートな空間をまとめ、残りをひとつながりのオープンな空間としつつ、色々な居場所を生み出したい、という方向性が固まってきました。
model1

手書きのスケッチを一旦図面化、模型を作り、周辺との関係や、スケッチで考えていたことが実現できそうか、確認を繰り返します。

diagram2 周辺環境への応答:「変形された切妻」/The building is correspond with surroundings.

検討を繰り返し、アパートと接する西側や路地から訪れる人を迎え入れる北東側は圧迫感を抑えるために高さを低く抑え、広がりを確保できる南東側に向かって平面上も断面上もメガホン状に広がる「周辺の状況に応答して変形された切妻大屋根の平屋」という基本方針が固まりました。

model2

ある程度空間構成が固まったところで、構造家と打合せするために作った軸組み模型です。まだこの時点では整理しきれず複雑な架構になってしまっています。構造家との打合せで出た「木造倉庫の様なおおらかな架構」という方向性を活かしながら、平面と構造を整理する作業を進める事になりました。

model3


実施設計図を基に作成した1/30の模型です。検討段階の軸組模型と比べると、特に屋根の架構が整理されています。